業界誌に掲載されていた記事によると、金属加工(鍛金)を専門とする芸術家が使う道具が、歯科医の使うものと共通しているそうです。歯科の領域は、血管や神経の通る歯の土台である歯茎などから硬い歯牙に人工物まで、扱う「素材」が多様です。その硬い部分=歯とその代替物=義歯などの治療に、いわゆるペンチやドリルに似た道具を使いまして、金工作家さんが、「似ているな〜」と感想されるのはもっともです。口中という小さな域内ですが、様々な形と働き方、組成を組み合わせた微妙で絶妙なバランスで成り立っている複雑な世界なのです。口内の粘膜は、皮膚と違って内臓の様でもありますが、外気に触れても大丈夫。それは常に唾液が表面を潤しているからですね。身体の表面と内側の重要な関門である「口」は、身体の中を垣間見ることの出来る不思議な位置にあります。